FCバルセロナは、多くの監督がチームを率い、それぞれの個性と戦術でクラブの歴史に新たなページを刻んできました。
ここでは、2000年以降のバルサの監督たちと、その時代のエピソードを振り返ってみましょう。
ロレンソ・セラ・フェレール(2000年–2001年)
2000年、バルサはロレンソ・セラ・フェレールを監督に迎えました。
彼は以前にベティスで成功を収めていましたが、バルサでは期待された成果を上げられず、2001年に解任されました。
彼の在任中、リバウドがバレンシア戦で見せたオーバーヘッドキックによるハットトリックは、今でも語り草です。
カルレス・レシャック(2001年–2002年)
セラ・フェレールの後任として、クラブのレジェンドであるカルレス・レシャックが監督に就任しました。
彼は選手時代からバルサに深く関わっており、監督としてもチームを支えましたが、成績不振により短期間で退任しました。
彼の在任中、若手のシャビ・エルナンデスが頭角を現し始めました。
ルイス・ファン・ハール(2002年–2003年)
オランダ人のルイス・ファン・ハールは、1997年から2000年にもバルサを指揮しており、2002年に再び監督に就任しました。
しかし、2度目の任期ではチームの成績が振るわず、2003年に解任されました。
彼の厳格な指導スタイルは選手たちの間で賛否を呼びました。
ラドミル・アンティッチ(2003年)
ファン・ハールの後任として、セルビア人のラドミル・アンティッチが短期間ながらチームを指揮しました。
彼はシーズン終了までチームを安定させる役割を果たしました。
彼の在任中、ロナウジーニョの加入が決定し、後のバルサ黄金期の礎が築かれました。
フランク・ライカールト(2003年–2008年)
2003年、オランダ人のフランク・ライカールトが監督に就任しました。
彼の下で、バルサは2004-2005シーズンと2005-2006シーズンにリーガ・エスパニョーラを連覇し、2006年にはUEFAチャンピオンズリーグ優勝を果たしました。
ライカールトの時代は、ロナウジーニョやデコなどのスター選手が活躍し、攻撃的で魅力的なサッカーが展開されました。
彼のリラックスした指導スタイルは、選手たちから「パパ」と呼ばれるほど親しまれていました。
ジョゼップ・グアルディオラ(2008年–2012年)
2008年、元バルサの選手であり、当時Bチームの監督だったジョゼップ・グアルディオラがトップチームの監督に昇格しました。
彼の下で、バルサは2008-2009シーズンに史上初の6冠を達成し、ティキ・タカと呼ばれるパスサッカーで世界を席巻しました。
メッシ、シャビ、イニエスタらを中心としたチームは、多くのファンを魅了しました。
グアルディオラは、試合前に選手たちに映画『グラディエーター』のシーンを見せて士気を高めるなど、独自のモチベーション術を持っていました。
ティト・ビラノバ(2012年–2013年)
グアルディオラの右腕として活躍していたティト・ビラノバが、2012年に監督に就任しました。
彼の下で、バルサは2012-2013シーズンにリーガ・エスパニョーラで100ポイントを獲得し、圧倒的な強さを見せました。
しかし、健康上の理由で2013年に退任し、翌年に惜しくも他界しました。
彼の闘病中、ライバルであるレアル・マドリードの監督ジョゼ・モウリーニョからもエールが送られるなど、サッカー界全体からの支持を受けました。
ヘラルド・マルティーノ(2013年–2014年)
アルゼンチン人のヘラルド・マルティーノは、2013年に監督に就任しました。
彼の下で、バルサはスーペルコパ・デ・エスパーニャを制しましたが、リーグ戦やチャンピオンズリーグでは期待された成果を上げられず、1シーズンで退任しました。
彼は、メッシの幼少期の恩師であり、その縁でバルサの監督に就任したと言われています。
ルイス・エンリケ(2014年–2017年)
元バルサの選手であり、Bチームの監督も務めたルイス・エンリケが、2014年にトップチームの監督に就任しました。
ルイス・エンリケの下で、バルサは2014-2015シーズンに「3冠」(リーガ・エスパニョーラ、コパ・デル・レイ、チャンピオンズリーグ)を達成し、クラブの歴史に新たな輝かしい記録を刻みました。
特に、メッシ、ネイマール、スアレスの3人が形成した「MSNトリオ」は、そのシーズンで計122ゴールを記録し、圧倒的な攻撃力を誇示しました。
エンリケは、ハードワークを厳しく求める一方で、選手の自主性も尊重するスタイルで知られ、チーム全体の士気を高めました。
興味深いエピソードとして、彼が選手時代に熱血的な性格だったことから、「現役時代と変わらず、今も選手と共に感情を分かち合う監督」として多くのファンに親しまれました。
エルネスト・バルベルデ(2017年–2020年)
2017年、バルサはエルネスト・バルベルデを新監督に迎えました。
彼の監督時代、チームはリーガ・エスパニョーラを2017-2018シーズンと2018-2019シーズンに連覇し、安定した成績を残しました。
バルベルデはディフェンシブな戦術を取り入れ、バルサのスタイルに新たなバランスを加えましたが、クラブの伝統的な攻撃サッカーを好むファンの一部からは賛否がありました。
バルベルデのエピソードとして、彼が選手に試合前の指示を紙に書き渡す独自の方法がありました。この紙が試合中に紛失し、相手選手に拾われたという逸話もあります。
キケ・セティエン(2020年)
バルベルデの後任として2020年に監督に就任したのが、元ベティスの監督キケ・セティエンです。
彼はクライフの「ポゼッションサッカー」をリスペクトする監督として知られており、バルサの伝統に忠実な戦術を掲げました。
しかし、チャンピオンズリーグでのバイエルン・ミュンヘン戦での8-2という歴史的敗北が決定的となり、短期間で退任しました。
面白い話として、セティエンはバルサでの初日に「カンプ・ノウでヤギの放牧をしてみたい」と冗談を言ったそうです。彼が家畜農場を持っていたことからの発言ですが、バルサファンにはユニークなエピソードとして記憶されています。
ロナルド・クーマン(2020年–2021年)
2020年には、かつてのバルサの英雄であるロナルド・クーマンが監督に就任しました。
彼は現役時代、バルサのチャンピオンズカップ初優勝を決定づけるフリーキックを決めたことで知られています。
監督としては若手育成に力を入れ、ペドリやアンス・ファティら次世代のスターを積極的に起用しましたが、クラブの財政問題や成績不振が重なり、2021年に解任されました。
クーマンは、在任中に選手たちへ「自分にできないことをするな」と忠告したことでも知られ、現実的な期待値を求める姿勢が話題になりました。
シャビ・エルナンデス(2021年–2024年)
2021年11月、バルセロナのレジェンドであるシャビ・エルナンデスが監督に就任し、クラブの再建に取り組みました。
彼の指導の下、2022-2023シーズンにはラ・リーガ優勝を果たし、クラブに久々の栄冠をもたらしました。
しかし、2023-2024シーズンは期待された成果を上げられず、チャンピオンズリーグでは準々決勝で敗退し、国内カップ戦でもタイトルを逃しました。
これらの結果を受け、クラブは2024年5月にシャビ監督の解任を決定しました。彼の在任中、若手選手の育成やクラブの哲学の再構築に尽力しましたが、結果が伴わなかったことが解任の要因とされています。